知ることはたのしい

"車輪の再発明"は時間がもったいないと思うから"車輪の設計図"を置いて学習の効率化に役立ちたい。そしてもっと素晴らしいものを開発してくれないかな。

『てつがくフレンズ 女の子の姿になった哲学者たちの哲学学園』---哲学の入りとしてはおすすめ

ふと、他者の考えや思考方法といったものを知りたいと思い、哲学を学ぼうとKindle Unlimitedで読める『てつがくフレンズ』を手にとってみました。哲学に関する書籍はこれが初で、知識に関しても「ソクラテスという人が無知の知を説いた」、「ニーチェは名言集で見かけた」といった、到底知識と呼べるようなものはありません。
本書に関して、私は人物と思想・キーワードを結びつけてイメージが付くようにすることを目的として読んでいます。このような背景のもと、以下に読んだ感想を述べていきます。


どんな作者?

○飲茶(やむちゃ)
東北大学大学院卒業。哲学者、兼作家、兼企業経営者。もともと普通のサラリーマンとして働いていたが、ある日、突然良いビジネスを思いつき退社して起業。哲学や科学などをわかりやすく解説した著書『史上最強の哲学入門』(マガジン・マガジン)『哲学的な何か、あと科学とか』『哲学的な何か、あと数学とか』(以上、二見書房)がヒット中。
とのこと。私自身この著者の作品を手にとるのは初めてなので本書を他の著書を手に取るかどうかの試金石としています。

どんな作品?

歴史に名を残した哲学者たちを女性化して逸話やどのような思想を持っていたかを紹介する漫画になっています。各哲学者のキーワードをキャラクターの特徴(性格や見た目など)で表しているため、イメージがつかみやすいかと思います。
ただ、全時代の哲学者を網羅しているわけではなく、主に古代哲学に焦点を当てて話が進んでいきます。

あらすじ

てつがくフレンズ | 飲茶原作 MAKO.作画 | 書籍 | PHP研究所

謎の学園「フィロソフィー学園」。そこには独自の思想哲学をもった哲学者たちが少女化した『てつがくフレンズ』たちが古今東西から集まっていた。ソクラテスプラトンアリストテレスそしてニーチェ……

 『てつがくフレンズ』たちが繰り広げる、わーたのしー! すっごーい!な学園生活! 漫画を楽しく読み進めるうちに哲学者たちの思想の本質が分かってしまうかもしれない? かつてない哲学コミックが誕生!

 『史上最強の哲学入門』の著者・飲茶氏が漫画原作として総指揮ッ!

 【登場する「てつがくフレンズ」たち】プラトンソクラテス、アナクサゴラス、タレスアナクシマンドロスアナクシメネスヘラクレイトスアリストテレスソフィストゴルギアスプロタゴラスピタゴラス、エンぺドクレス、パルメニデス、ゼノン、デモクリトスディオゲネス孔子荀子孟子韓非子、龍樹、ミシェル・フーコーニーチェ

私の感想

はっきり言うと、他の哲学書を読む前に本書を読んで正解でした。一般的な哲学書では「◯◯が△△という思想を考え出しました。」といった文脈で人と思想が述べられます。必ずしも誰が何を考えたかを知る必要はないのですが、知っておくと理解が早まることは確かです。

本書は新しいキャラクターが登場するときは4コマ漫画+説明文の紹介から入ります。 例えばプラトンの紹介では、

  • 高貴な生まれで運動能力はオリンピック級
  • 街でソクラテスに遭遇し、哲学に傾倒
  • 「人間が頭に思い浮かべている『善』は世界の何処かに存在する」というイデア論を唱えた
  • "プラトン"は本名でない!

といった情報が得られます。

漫画としてはプラトンを主人公に学園系日常モノとしてストーリーが進んでいく中でキャラクターの哲学的思想の解説や掘り下げ、逸話のパロディが盛り込まれており、決して哲学者を女性化して男性読者に媚びているだけではないことがわかります。

ただ、本書は長期作品の1巻という立ち位置であるため古代〜現代までの哲学を網羅しているわけではありません。本書でわかるのは主に古代哲学者であり、その他の時代の哲学者*1については一部が紹介される程度にとどまっています*2。エピローグでも述べられていますが、もし次巻が発売されれば中世の普遍論争や近現代哲学に話が展開されていくようです。

まとめ

近年よくある女性化&デフォルメ化された哲学入門書を読んでみました。
この手の作品は賛否両論であったり、好みが非常に分かれるところではありますが、私個人としてはアリだと思っています。
もちろん史実と完全に同一ではないでしょうが、知識0から一歩を踏み出すには非常に入りやすいのではないかと思います。
Kindle Unlimitedで読めますので、もし哲学を学んでみたくなっていただけたのであればぜひどうぞ。



*1:ニーチェはストーリー上最後の最後に2頁だけ

*2:登場するてつがくフレンズとして名前が挙がっていても残念ながら。