論文の整理・管理方法を比較検討してみた
研究するにあたって論文のサーベイは必要不可欠です。ただ、サーベイはしたものの必要な時に必要な情報を引き出せないようでは困りものです。
私も情報の整理に苦労していたため今回改めて検討してまとめてみましたので参考にしてください。
私が要求している仕様はこのようなもので、使用感についてもこれらを基準に書いています。
* 論文ファイルとメモが何らかの形で紐付いている
* 場合によっては書籍などのメモも行いたい
* メモに画像の添付が可能(論文の図を貼ってメモをしたい)
* メモにある程度の装飾が行えること(太字だとか文字色だとか)
* タグや検索機能で管理したい
* 複数のデバイスからアクセスしたい
* PDFの全文検索機能はあまり重視していない
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まとめ
- 論文専用の統合環境は便利ではあるものの自分の使用感に合致するものは少ない(どこかで妥協が強いられる)
- メモアプリとファイル管理アプリを分けるのも一つの選択肢
- その中で私が気に入った・おすすめするのはBoostnote
- 決め手はMarkdown、ファイル添付可、コードスニペット機能、自分が利用しているクラウドを共有ストレージに設定可能な点
Mendeley
Mendeleyは定番の論文管理ソフトです。
論文タイトルや著者、アブストといったテキストデータ以外にもPDFなどのファイルも同時に保存でき、一本の論文に対し1つのリストとして管理することができます。
さらに、そのリストに対しメモも残すことができるので論文に関する情報は1元管理できるということになります。
また、各OSに対応したアプリだけでなくブラウザ版もあるため、自分の環境に合わせたものを使うことができます。
使い方については東京大学情報基盤センターが出しているPDFを参考にするとよいと思います。
論文をインポートするためのwebプラグインも提供されており、ボタン一つでインポートが可能となっています。
PDFがダウンロード可能な状態であれば、自動で添付した状態でインポートを行ってくれるので便利です。
下記の図のようにPDFと書いてある横に✔マークがついているのが目安で、添付できていないと×マークが付きます。
他にも登録情報から自身が著者になっている論文を自動で探してきてサジェストしてくれる機能があるみたいですね。
なので、自分の論文を紐づけるとさらにそれに関連する分野の論文をサジェストしてくれるので結構便利です。
メモ機能についてはかなりシンプルで、かろうじて文字の装飾が可能というレベルになっています。
メモに関しては他のツールのほうがいいかもしれません。
メリット
- 論文に関する情報を1元管理できる
- データはサーバにアップロードされるので、複数の環境でも運用しやすい
- フォルダの作成やお気に入りなど整理するのに必要な機能も備わっている
- 保存した論文に合わせて関連する論文をサジェストしてくれる
- 文献リストの出力(未確認)
- PDFビューワ付き
メリット
- サジェスチョンの条件は設定できないので古い文献であったり、フォーカスがずれていたとしても関係なく出てくる
- 欲を言うと、保存した論文の参考文献も簡単に追加できると嬉しい
- 容量が無料版だと2GB1まで2
- 日本語非対応でうまくデータが取り込めない
- メモ機能が貧弱(色の変更や画像の添付ができない)
- PDFビューワが頻繁にリロードを挟む3(環境:Safari)
- PDFビューワの文字範囲選択機能がまともに動作していない4
ReadCube
ReadCubeもMendeleyと同様なツールで、文献調査に必要な環境が一通りそろっています。特に、ツール上でGoogle Scholar の検索が行え、そのまま必要な論文をダウンロードしてこれる点では完全にReadCube内で完結できるので便利でなおかつ重複ダウンロードも回避でき優れていると言えます。
使い方についてはこちらをご覧ください。
www.chem-station.com
試用期間は30日間あるようで、この期間の後は機能は制限されるものの継続して利用可能なようです。
無料版ではタグ付けが不可であったりクラウドサービスによるオンライン同期の利用が制限されます。
そのため、複数デバイスでの利用を考えている場合ですと運用は厳しいかもしれません。
メモ機能はこちらにもついていますがプレーンテキストのみの入力となっているようです。
PDFビューワに関しては少し触った限りではリロードも発生しておらず軽い印象です。マーカーや下線、打消し線、フリーハンドといった機能はついています。
しかし注釈機能は正方形のボックスが置かれ、そこに書き込む形式なのでどこに対する注釈なのかが分かりにくいものとなっています。
メリット
- ファイルを含めて一元管理が可能
- ツール上から論文検索が行えるためブラウザにアドインを入れる必要がない
- Citation情報が見れる
デメリット
- 試用期間30日で無料版ではクラウドサービスやタグ付けが不可になる
- アブストなどの情報がPDFを開かないとみられない
- メモ機能がプレーンテキストのみ
- PDFビューワの注釈がどこを指しているのかわかりづらい
Boostnote
日本人の方が開発に携わっており、日本語の情報も容易に得られるオープンソースのメモアプリになります。
特筆すべきは、スニペットノートというソースコードをメモすることに特化したノートとMarkdown記法に対応したノートの2つを兼ね備えている点です。
Markdown記法ではソースコードを記述することもできるため、Markdownだけで十分だとも考えられますが、スニペットノートでソースコードだけを管理することもできるので
ソフトウェアも開発する人には便利なものとなっているといえます。
使い方に関しては以下のはてなブログを参考にするとよいと思います。 boostnote.hatenablog.com
BoostnoteはiOS/Android版も開発していたそうなのですが、残念ながら2019/5現在では公開しておらず(開発休止状態)利用できません。将来的に再び利用できるようになることを期待しています。
メリット
- Markdown記法に対応
- ファイル・画像の添付が可能
- 保存先をGoogle Driveなどに設定することで任意のデバイスから同じメモにアクセスできる
- ソースコードのメモも可能
- iOS/Androidアプリ版も将来的に利用可能になる可能性がある
- タグ付け可能
デメリット
- 階層的なフォルダ分けができない(1層だけ)
- ファイルを添付すると自動的に一意の文字列を生成しファイル名とするため、アプリ外から参照するのは難しい
- htmlタグも記述できるが、はてなブログのようにボタンなどのサポートがあるわけではないので自力でコードを用意する必要がある
Zotero
こちらも文献管理用に開発されたソフトです。機能的にはMendeleyと似たようなもので、参考文献リストの出力にも対応しています。
無料版で提供しているクラウドストレージが300MB5までとなっておりMendeleyよりも少ないのは残念な点ですね。
Mendeleyにはない点として文献以外のウェブ情報のアーカイブが作成可能で、それらについてもメモが残せるという特徴があります。
メリット
- ファイルを含めた一元管理
- 文献以外の情報も管理可能
- 参考文献リストが出力可能
- タグ付けが可能
デメリット
- 無料版では容量300MBのみ
- PDFファイルを直接インポートできない
Excel・PowerPoint
一時期Excelで論文のメモを取っていたのですが、先に言っておくとこれはイマイチ自分にはハマらなかったです。 私が特に気に入らなかった点は、簡単に検索できないことと、PDFとの関連付けができないところになります。 検索自体はできても、その一覧を得ることはできないですし、メモから本文であるPDFを参照するのも手間でした。 この手の問題が気にならない人については、事実上スクラップブックのように自由にメモが取れるので悪くないかと思います。
メリット
- スクラップブックのように扱える
- PowerPointであれば論文紹介などに流用できる
- ディレクトリ構成含めカスタマイズが容易
- 追加ソフトのインストールが不要
デメリット
- どこにどの論文のメモがあるかわかりづらい
- PowerPointはキャンバスサイズに制限
- スマホからの編集が難しい6
- タグ付けできない
その他の選択肢
さて、ここまでで文献管理ツールをいくつか紹介しました。メモと論文管理を別個に行うといった方法もあるので いくつか教えていただいたものも含めてここに記載させていただきたいと思います。
論文保存ツール
メモツール
- Google Keep: ファイル添付はできないので何らかのファイル管理手段と併用する必要があります。
- Evernote: ファイルの添付も可能なのでこれ一つで管理も可能です。ただし、ファイル全文検索機能は有料版のみで無料版での月間アップロード容量は60MBです。
- Scrapbox: 無料版は100ページまで7 でファイル添付はできないようです。
論文を管理する方法はここに挙げた以外にもあるでしょうし、工夫次第ではもっと効果的に管理することもできると思います。 その中で私はBoostnoteを選択しました。みなさんが自分の求めている条件にあったツールを見つけるのにこの記事が少しでも参考になれば幸いです。